マンガ・アニメ・ゲームなどのキャラクターなどを題材とした「二次創作作品」が同人誌の多くを占めています。原作の著作権者の許諾を得ることなく二次創作物を不特定多数へ販売することは、著作権侵害の恐れがあります。
現状では二次創作活動は、ファン活動の延長線上にあるものとしてとらえ、原作との相乗効果を期待することもあり、多くの場合黙認されています。商業出版の世界と同人誌の世界の持ちつ持たれつの関係が長く続いたことにより、同人誌は今や日本におけるマンガ・アニメ隆盛の原動力の一つであり、サブカルチャーの一つの分野を形成するまでに至りました。
最近では、一定のガイドラインを設けた上で二次創作を認めるなどの「明示の許諾」に切り替える動きすらあります。現時点で著作権侵害は親告罪とされており、著作権者が告訴しない限り刑事責任を問えない。このことが、著作権者による二次創作同人誌の黙認に一定の効果を与えています。しかし、訴えられてしまえば対抗できない「グレーゾーン」に位置しているということだけは、認識しておいてください。
私たち印刷会社は「表現の自由」を最大限尊重する立場で事業を続けております。しかしながら、表現の自由が保障されているとはいえ、その表現が法令や公序良俗に違反することとなる場合はお手伝いすることができません。
2013年4月に成人向けマンガ雑誌を出版する「コアマガジン社」に家宅捜索が入り、7月に同誌の編集者が、わいせつ図画頒布の疑いで逮捕されました。この事件を受けて成年向けマンガ雑誌は、修正範囲を広げる・濃くするといった対応を取っています。
では、同人誌はどう対応すべきなのか。最大イベントである「コミックマーケット」は従来から「商業誌に準じる」としており、これが事実上の同人誌業界の標準となっています。商業誌をめぐる状況が変化したと認められるため、同人誌における修正も以前よりも必然的に厳しくすることが求められます。
刑法175条の「ワイセツ図画」については、明文化された基準は存在せず、関係者の逮捕事例や裁判例を見ながら、主に「性器・結合部への修正を行う」ことで対応してきました。しかし、その修正も当然ながら法的に「安全・明確」な基準が存在しない以上、常に「当局の判断」により逮捕、起訴される可能性をはらんでいるものであるという事実を改めて認識していただき、最新の状況をしっかりと把握されたうえで創作活動を行っていただくよう、重ねてお願いいたします。
「修正をどうしたらいいのか」ご相談いただくことがございますが、印刷会社の判断基準は
「即売会の基準」「逮捕事例や裁判例」を参考にした運用上の基準でしかなく、発行を保証するものではありません。厳しくすると注文が減少し、緩やかにするとリスクが高まる。結局、皆様とリスクを共有しているのが印刷会社です。
発行責任は本の発行人であるサークルもしくは作者自身でしか負うことはできません。私たち印刷会社は代わりにはなれないのです。この発行責任を表すのが「奥付」です。
同人誌即売会の主催者からも奥付の必要性を説かれていると思います。「奥付がない」ということは、本人に悪気はなくとも「何か隠さないといけないことがある」とみなされるケースが実際にあったからです。特に奥付のない成人向けの本は、ブラックマーケットと結び付いている可能性があると、当局からみなされるリスクがあります。
特に「発行責任者の連絡先」が重要です。本来であれば商業誌と同様に所在地(住所)や電話番号を記載することが望ましいのですが、悪用の恐れもあるため「メールアドレスかHPアドレス」でも可としています。最近はtwitterやpixivなどのIDのみが連絡先として記載されている原稿も多くなりましたが、連絡を取るために会員登録を要するSNSのIDは、連絡先としては不十分とされていますので注意しましょう。